子育てが終わった後——予定表が急に軽くなったとき

送り迎えも、行事も、受験も終わりました。 夜中まで起きて待つ日も、もうありません。

念願だったはずの時間ができて、けれど、うれしいという言葉が出てこない。 朝起きて、今日やるべきことを思い出そうとして、思い出すものがない。

そういう時期に入られた方に向けて書いています。

落ち着かないのは、贅沢を言っているからではありません

この戸惑いが人に伝わりにくいのは、外から見れば良いことしか起きていないからです。

子どもは無事に育った。手が離れた。時間ができた。 どこを取っても、うまくいった話に見えます。だから、しんどいと言った瞬間に、話がややこしくなります。子どもに何か不満があるように聞こえてしまう。

そして、周りからはこう言われます。 これからは自分の時間ですね。好きなことをしてください、と。

その言葉が、なぜか少し重い。 好きなことが思いつかないからです。思いつかない自分を、また責めることになります。

けれど、これは意欲の問題ではありません。 長いあいだ、自分の予定は、誰かの予定から逆算して決まっていました。逆算の元になる相手がいなくなったとき、決め方そのものが分からなくなる。それだけのことです。

わたしは、この感覚を、毎朝鳴っていた目覚ましを止めた朝のようなものだと思っています。 あの音は、うるさいものでした。止められるなら止めたいと、何年も思っていたはずです。 けれど、止めた翌朝に来るのは、解放感だけではありません。何時に起きればいいのかが分からない、というあの落ち着かなさが一緒に来ます。眠れるようになったのに、かえって早く目が覚めてしまう。 音が消えたのではなく、一日の骨組みが一本抜けたのです。

鑑定師としての見立て

わたしが学んできた帝王学陰陽五行の見方では、人が誰かに向ける関わりを、相手ごとに分けて見ていきます。仕事相手や友人に向かう面、目上に向かう面、パートナーに向かう面。そして、部下や子どもといった、目下に向かう面です。

子育ての年月というのは、この最後の面をいちばん強く使う時期です。 そして、ここが大事なところなのですが、子育てが終わっても、その面がなくなるわけではありません。使う先が空くだけです。

わたしがこれまでご相談をお聞きしてきたなかで、この時期の戸惑いは、力を失ったことから来ているのではなく、力の向け先が急に消えたことから来ている、と感じることが多くありました。 持っているものは、そのまま残っています。渡す相手だけが、いなくなっている。

そして、ある星については、人を育てること、教えることが、後年に効いてくる使い方だと教わりました。 自分のために使っているあいだは持て余す力が、誰かのために使い始めた途端に噛み合う。そういう性質のものがある、という話です。

これを聞いたとき、育てる力というのは、自分の子どもだけに使うものとして配られているわけではないのだろう、と思いました。 相手は、子どもでなくてもかまいません。年下の同僚でも、近所の誰かでも、これから何かを始めようとしている人でも。渡し先は、思っているより広いところにあります。

もうひとつ、時期のことも添えておきます。 巡りには、外に向かって開いていく季節と、内側にこもって整える季節があります。役割がひと区切りついた直後は、たいてい後者にあたります。 この季節に、次の役割を急いで探すと、たいてい噛み合いません。空いた時間を埋めるために選んだものは、長く続かないことが多いのです。

かわりに、この季節に向いていることは昔から言われています。学ぶこと。誰かのために、見返りのない形で手を動かすこと。これまで支えてくれた人を思うこと。そして、体を整えること。 どれも、次の仕事を決める作業には見えません。それでも、次の季節に前へ出るのは、この時期に手入れをしていた面のほうです。

そして、才能は磨かないと開花しない、とも教わりました。 子育ての年月に使わずにいた面は、まだ眠っているだけです。眠っているものは、起こすのに少し時間がかかります。すぐに動き出さないことを、遅れとして数えなくて大丈夫です。

同じ生まれの人でも、環境や生き方によって歩む道は変わります。当たり外れではなく、いまはそういう季節にいるのだな、と眺めるところから始めてみてください。

今日からできる、小さな一歩

次を決めるための一歩ではありません。空いた場所を、急いで埋めないための一歩です。

  • 子どもの予定が入っていた時間帯を、一週間だけ空けたままにしてみる。埋めるのは、空白の居心地を知ってからでも間に合います
  • 頼まれていないことを、ひとつだけやってみる。長いあいだ、予定はいつも誰かの都合から来ていました。誰の都合でもないことを一度やると、感覚が戻ってきます
  • 時間ができたらやりたいと昔思っていたことを、思い出して書き出す。やらなくてかまいません。書くだけで、当時の自分が何を望んでいたのかが分かります
  • 子どもへの連絡の頻度を、こちらで決めておく。返事を待つ形にすると、時間の主導権が向こうに移ってしまいます
  • 誰かに、知っていることをひとつ渡す。段取りでも、暮らしの知恵でもかまいません。育てる力は、使い先があると軽くなります

ひとつだけで十分です。何もしない週があっても、後退ではありません。

おわりに

やり終えたことは、たしかにやり終えたのです。 それは、これから何をするかが決まっていないことと、何の関係もありません。

目覚ましを止めた朝の落ち着かなさは、時間が経つと収まります。 そのあいだは、起きる時刻を自分で決め直しているところだと思っていてください。

同じような空白を抱えている方には、やることはあるのに、心が空っぽな昼——専業主婦の虚無感についても添えておきます。

もし気持ちの落ち込みが長く続いていたり、朝起きるのがつらい日が重なっているようでしたら、専門の相談窓口や医療機関も頼ってくださいね。役割がひと区切りついた時期は、思っているより負担がかかります。

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