断れない性格は、直さなくていいのかもしれません

頼まれた瞬間に、口が「大丈夫です」と言っている。

言ったあとで、予定を見て、青くなる。 どうしてまた引き受けたんだろう、と思いながら、結局その週も自分の時間を削って片づける。

そして、次に頼まれたときにも、また同じことをしている。 そういう繰り返しを、もう何年も続けてこられたのかもしれません。

断れないのは、気が弱いからではありません

断れない性格を直したい、と検索する方の多くは、自分に芯がないのだと思っています。

けれど、実際に起きていることは、少し違うように見えます。 断れない方は、断ったあとの光景が、断る前に見えてしまうのです。

困った顔、気まずい空気、代わりに引き受ける誰かの手間。 断ると決めた瞬間に、その全部が一度に浮かびます。そして、それを見ながら断るというのは、なかなかの重労働です。引き受けるほうが早い、と体が判断するのも無理はありません。

もうひとつ。 引き受けたことは、たいていうまくいきます。だから、周りには苦労が見えません。見えないので、次もまた来ます。 断れなさがしんどくなるのは、能力が足りないからではなく、能力が足りているせいで用件が集まってしまうから、という面があります。

そして最後に、いちばん申し上げたいことを先に置いておきます。 断れなさの中身は、たいてい、人の状況が見えることと、引き受ける力があることの二つでできています。どちらも、簡単に手に入るものではありません。

鑑定師としての見立て

わたしが学んできた帝王学陰陽五行の見方では、その人の心の中身を、いくつかの星に分けて捉えます。

そのなかに、責任感が強く、人を支えることに力を発揮する星があります。この星を持つ人は、役目や役割を与えられると動きやすい。任されると応えたくなるので、頼む側から見ると、たいへん頼もしい相手になります。 別の星には、身近な人を深く育てる質があります。この星は、目の前の人の困りごとを放っておけません。 そして、感じ取る精度がとても高い星もあります。この星を持つ人は、相手が言い切らなかったところまで受け取ってしまうので、断りにくさが一段強くなります。

これらは、どれも欠点として教わったものではありません。 むしろ、人と仕事をしていくうえで頼りになる資質として扱われます。

つまり、断れなさというのは、性格の不良品ではなく、性能のあらわれ方のひとつです。 そして、性能は削れません。削ろうとすると、たいてい、いちばん良いところまで一緒に削れてしまいます。

わたしは、この状態を、営業時間の札が出ていないお店のようなものだと考えています。 そのお店は、たまたま長く開けているだけなのですが、外から見ている人には、いつでも開いている店に見えます。悪気があって遅い時間に来るのではなく、閉まっていると思っていないから来るのです。 そして、店主のほうも、来てくれた人を追い返すのは忍びない。こうして、閉店時間だけがどこにもないまま、日々が過ぎていきます。

ここで大事なのは、頼む側を薄情な人として片づけなくていい、というところです。 札が出ていないのですから、相手には分かりません。分からない相手を責めても、閉店時間は増えません。

増やせるとしたら、札を出すところからです。 そして、札を出すというのは、断ることとは少し違います。断るのは一件ごとの判断ですが、札は、あらかじめ決めておく仕組みのことです。 一件ごとに勝負すると、断れない人はまず勝てません。相手の困り顔が見えてしまうからです。けれど、先に決めておいた枠なら、その場の空気と戦わずに済みます。

もうひとつ、時期のことも添えておきます。 心が揺れやすい巡りにいるときは、判断のものさし自体が普段と違ってきます。この時期は、引き受けすぎることもあれば、逆に、いつもなら受ける用件が急に重く感じられることもあります。 大きな引き受けごとについては、その場で決めずに一晩置く。それだけで、あとから測り直したくなる回数がずいぶん減ります。

同じ生まれの人でも、環境や生き方によって歩む道は変わります。当たり外れではなく、こういう資質が備わっていたのだな、と眺めてみてください。

今日からできる、小さな一歩

性格を変える話ではありません。札を一枚だけ出すための、小さなことを置いておきます。

  • 引き受ける前に、質問をひとつだけ返す。いつまでに、どれくらいの量か。答えを聞いてから返事をする形にすると、即答の癖に隙間ができます
  • 「できます」を「ここまでならできます」に変えてみる。全部か、ゼロか、の二択から降りるだけで、ずいぶん楽になります
  • 自分の口に合う断り文句を、ひとつだけ用意しておく。その場で考えると、いつまでも言葉が出てきません。作り置きが効きます
  • 今週引き受けた用件を、かかった時間ごと書き出す。断りにくさは、量が見えていないところで大きくなります
  • 頼まれごと以外の場面で、希望を言う練習をする。行く店、待ち合わせの時間。中身の軽いところから始めるのがこつです

すべてやる必要はありません。ひとつも動かせない週があっても、それは怠けではありません。

おわりに

断れないことで損をしてきた場面は、確かにあったと思います。 それでも、その性質のおかげで助かった人も、たぶん同じくらいいます。

直すのではなく、開けている時間を自分で決める。 それだけで、同じ性格のまま、荷物はずいぶん軽くなります。

気づきすぎてしまう感性については、調舒星は「めんどくさい」のか——傷つきやすさの正体にも書いています。

もし気持ちのつらさが長く続いているようでしたら、専門の相談窓口も頼ってくださいね。引き受ける側にいる人ほど、疲れが静かに積もります。

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