夫にイライラする本当の理由は、夫ではないことがある

置きっぱなしのコップ。 聞いているのかいないのか分からない返事。 こちらが動き回っているのに、座ったままの背中。

どれも、人に話せば「そんなこと」で終わる話です。 それが分かっているのに、腹が立つ。立ったあとで、こんなことで怒る自分が嫌になる。

その往復に疲れている方へ、書いています。

些細なことで腹が立つのは、心が狭いからではありません

腹が立つ大きさと、出来事の大きさは、あまり比例しません。

同じコップでも、平気な日と、爆発しそうな日があります。 コップの側は何も変わっていないので、変わっているのはこちらだ、と考えて、自分を責めることになります。

けれど、ここには順番の誤解があります。 腹が立つのは、心が狭くなったからではなく、たいてい、余白がなくなっているからです。余白のあるときは、同じ出来事が通り過ぎます。なくなると、そのまま引っかかる。

そしてもうひとつ。 怒りは、いちばん近い人のところに出ます。安全だからです。上司には出せない、子どもには出したくない、外では出せない。出せる場所が一か所しかないと、そこに集まります。

つまり、怒りの向き先と、怒りの出どころは、しばしば別のところにあります。 これは、夫に非がないという話ではありません。向き先だけを見ていると、いつまでも出どころにたどり着けない、というだけの話です。

鑑定師としての見立て

わたしが学んできた帝王学陰陽五行の見方では、人が誰かに求めるものを、相手ごとに分けて見ていきます。

仕事相手や友人に求めるもの。上司や親に求めるもの。部下や子どもに求めるもの。そして、パートナーに求めるもの。 同じ人でも、この四つは別々です。仕事では細かい段取りを求める人が、家では何も言わずにそばにいてくれることを求めている、ということが普通に起こります。

ですから、パートナーに何を求めているかは、その人がふだん口にしていることとは限りません。 そして、たいていの場合、本人もそれを言葉にしていません。言葉にしていないものは、相手に届きません。届かないので、埋まらない。埋まらないところに、日々の小さなことが落ちてきて、そこで音が大きくなります。

コップに腹が立っているように見えて、実際には、気づいてほしいという言えていない一行のほうが鳴っている。そういうことが、かなりあります。

わたしは、この状態を、カメラのピントのようなものだと考えています。 どんなに良いカメラでも、近づきすぎると、ピントは合いません。ぼやけるのは性能が悪いからではなく、近すぎるからです。 長く一緒にいる相手は、いちばん近い被写体です。細かいところは見えるのに、全体の輪郭がつかめなくなる。少しだけ後ろに下がると、同じものが急にはっきり写る、ということがよく起こります。

もうひとつ、時期のことも添えておきます。 巡りには、心が揺れやすくなる時期があります。その時期には、同じ出来事が普段の何倍も刺さります。いつもなら流せることが流せない。決めなくていいことを、いま決めたくなる。 そういうときに、この人とはやっていけないという結論まで一気に進んでしまうことがありますが、それは気持ちが定まったというより、季節が揺れていることのほうが多いです。判断は、凪いだ日に回して大丈夫です。

そして、これはお伝えしておきたいのですが、イライラしていること自体を、直すべき欠陥として扱わないでください。 腹が立つのは、まだこの関係に期待が残っている証拠でもあります。本当に何も期待していない相手には、たいてい何も感じません。

同じ生まれの人でも、環境や生き方によって歩む道は変わります。当たり外れではなく、いまはこういう距離にいるのだな、と眺めるところから始めてみてください。

今日からできる、小さな一歩

相手を変える話でも、我慢する話でもありません。ピントの距離を、少しだけ取り戻すためのことです。

  • 腹が立った時刻を、三日だけ書きとめる。中身は書かなくてかまいません。夕方に偏っている、日曜に多い、といったことが見えてきます
  • そのイライラが、今日のことなのか、積み重ねのほうなのかを、一言で分けてみる。分けるだけで、その場で全部を言わずに済みます
  • 頼みごとを、その場ではなく朝のうちに置いておく。動き出したあとの依頼は、こちらの言い方もきつくなりがちです
  • 自分の予定に、十五分の空白を入れる。用事を減らすのではなく、余白を先に確保するのがこつです
  • 家のなかに、目が届かない場所を一か所だけつくる。見えるものは気になります。見えなければ、腹も立ちません

ひとつだけで十分です。何もできない日があっても、後退ではありません。

おわりに

イライラしている自分を、悪い妻の証拠のように数えなくて大丈夫です。 近くにいる人ほど、ピントは合いにくい。それだけのことが、ずいぶん長く続いているだけかもしれません。

今日のところは、腹が立った理由を全部説明できなくてかまいません。 少し下がって、輪郭が戻るのを待つ日があってもいいと思います。

気持ちそのものが動かなくなっている方には、夫を好きじゃないかもしれない——それでも一緒にいる日々のことも置いておきます。

もし気持ちのつらさが長く続いていたり、安全に関わる不安があるようでしたら、専門の相談窓口も頼ってくださいね。外に相談することは、家庭を壊すことではありません。

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