相談できる人がいない夜に——ひとりで抱えるしかないと思っている方へ

抱えていることがあります。 けれど、これを誰に持っていけばいいのかが、思いつかない。

友人の顔は浮かびます。家族もいます。 それでも、この話をしたら心配をかける、迷惑になる、関係の温度が変わってしまう。そこまで考えて、結局、誰にも渡さないまま夜になります。

そういう夜が続いている方に向けて書いています。

相手がいないのではなく、席が空いていることがあります

相談できる人がいない、と感じるとき、その中身は人によってずいぶん違います。

物理的に近くに誰もいない方もいます。 たくさんの人に囲まれているのに、この話を渡せる人だけがいない、という方もいます。 そして、いちばん多いのは、相談される側に長く回ってきた方です。

聞き役に定着すると、相談するという行為そのものが、そこにない選択肢になります。 持ちかけたら相手が驚く。役割が入れ替わって、場が落ち着かなくなる。そこまで想像がつくので、口を開く前にやめる。

もうひとつ、年齢とともに起きることもあります。 学生の頃は、話す相手が毎日そこにいました。用がなくても会う仕組みが、暮らしのなかに組み込まれていた。 大人になると、その仕組みが外れます。会うには約束が要り、約束するには理由が要り、理由をつくるほどの話ではないと判断して、そのままになる。

つまり、人柄の問題ではありません。 持っていく先の席が、いつのまにか空いたままになっている。それだけのことが多いのです。

鑑定師としての見立て

わたしが学んできた帝王学陰陽五行の見方では、人との関わりを、方角ごとに分けて見ていきます。

自分自身の心。仕事相手や友人に対して求めるもの。パートナーに対して求めるもの。部下や子どもに対して求めるもの。そして、上司や親といった目上に対して求めるもの。 同じ人でも、向き合う相手によって求めるものが違う、という考え方です。

このなかで、困りごとが向かいやすいのは、たいてい目上のほうの席です。 先に通った人に聞く、頼る、判断を預ける。相談という行為は、もともとそういう形をしています。

ところが、この席は、意外と早くに空きます。 親には言えない事情が増える。職場では自分のほうが上になる。頼っていた人が、いつのまにか自分より弱くなっている。 そして、目上の席が空いた人は、その分を目下の席で埋めようとしがちです。つまり、後輩や子どもの話をよく聞く側に回る。聞くほうが、自分の話をするよりずっと楽だからです。

こうして、聞く席だけが埋まって、話す席が空いたままになります。

もうひとつ、心の側の話も添えておきます。 宿命鑑定では、その人の心の中身をいくつかの星に分けて見ます。そのなかには、広く人に手をかけていく星や、身近な人を深く育てる星があります。どちらも人の面倒をよく見る星ですが、面倒を見る力と、面倒を見てもらう力は、別のものです。 前者ばかりを長く使っていると、後者のほうは、使い方を忘れていきます。忘れているだけで、なくなってはいません。

それから、時期のことも少しだけ。 巡りには、外に向かって開いていく季節と、内側にこもって整える季節があります。内にこもる季節にいるときは、人と関わること自体が重くなります。 去年は平気だった連絡が今年は億劫だ、というようなことが起きるのは、人が離れたからでも、あなたが冷たくなったからでもなく、季節が変わっただけかもしれません。そういう時期に、無理に相手を探して回ると、余計に消耗します。

わたしは、相談先というものを、建物の非常口の灯りのようなものだと思っています。 あの灯りは、ふだん誰も見ていません。使う日も、たいてい来ません。 それでも、あの緑の光がどこにあるか知っている人と、知らない人とでは、同じ部屋にいても呼吸の深さが違います。実際に使うかどうかより、ある場所を知っていること自体が効いている。

ですから、いま相談する必要がなくてもかまいません。 持っていく先が一つも思い浮かばない、という状態だけを、今夜のうちに変えておければ十分です。

同じ生まれの人でも、環境や生き方によって歩む道は変わります。当たり外れではなく、こういう席の配られ方をしてきたのだな、と眺めるところから始めてみてください。

今夜のうちにできる、小さな一歩

人間関係をつくり直す話ではありません。持っていく先を、ひとつだけ用意しておくための小さなことです。

  • 相談ではなく、報告の形で誰かに一言渡す。「最近ちょっと忙しくて」で十分です。相談の前段は、たいてい雑談の形をしています
  • 話せる先の名前と連絡先を、ひとつだけ手元に控えておく。使わなくてかまいません。控えておくことが目的です
  • 抱えていることを、時間を決めて十分だけ書く。まとめようとせず、途中で終わってかまいません。渡す前に、輪郭だけつくっておきます
  • 今日、誰かの相談を聞いたなら、その分だけ自分の時間をとる。聞く側は、思っているより消耗しています
  • ひとつだけ、人に頼んでみる。荷物を持ってもらう、日程を決めてもらう。中身の軽いことから始めるのがこつです

ひとつだけで十分です。何もできない夜があっても、後退ではありません。

おわりに

誰にも渡せないまま持っているものは、抱えている本人が思っているより重いです。 そして、重さは、渡さなくても、置き場所を決めるだけで少し変わります。

今夜のところは、持っていく先がひとつもない状態ではなくなった、というところまでで十分です。

ずっと引き受ける側に回ってきた方には、長女がしんどいのは、あなたが弱いからではありませんも置いておきます。

そして、身近な人に言えないことは、少し離れた相手のほうが話せることがあります。専門の相談窓口も、どうぞ頼ってくださいね。知らない相手のほうが話しやすいというのは、逃げではなく、よくあることです。

同じカテゴリの記事を見る